タイトル、適当に並べているように見えます。ですが、つながりがあります。順に述べます。
クラウドコンピューティングを肯定し、懐疑する
まず、クラウドコンピューティング。先日NHKの「クローズアップ現代」でsalesforce.comがとりあげられていたようで、おかげでうちの母でも言葉は知るようになりました。まあ多分何なのかよく分かっていないと思いますが。
ただ、クラウドコンピューティングというものをSaaSの文脈だけから語ると、「ただのWebアプリのことをまたリブランディングしてる」という指摘をうけやすいので、あまりよろしくないかと思います。クラウドコンピューティングには仮想化技術であったりユーティリティコンピューティングであったりも関連しているので、それぞれ今までの立場が異なる人は、その人の今までの関心があった側面からクラウドコンピューティングの重要性を語っています。
おそらく、クラウドコンピューティングとはさまざまな人の期待が入った言葉なのでしょう。この点で「Web 2.0」と同様でありBuzz Wordの危険はありますが、さすがにもうちょっと共通したイメージはあります。いままで自分で抱えなければいけなかったいろんなものを、全部むこう側、雲のむこうに持っていけるんじゃないか、というものです。
これに関して、節目の技術トレンドが大体そうであるように、肯定的な人と懐疑的な人がいます。肯定的な人は、これはもう自然な流れであり、ほとんどのシステムがいずれそうなる(雲の上へ移行する)だろう、という意見でいます。逆に、懐疑的な人は、それはごく一部のもの(メールやスケジューラなど)だけであり、特に業務に密接に関連した重要かつ機密なシステムが移行することはあり得ない、と考えます。
大まかにわけてしまうと肯定派に属する自分ですが、懐疑派が言っていることもよくわかります。実際、技術者/プログラマの多くは懐疑派になることができます。これはおそらく、システムがブラックボックス化されることへの不安や、自分の管理下になくなることへの抵抗がそうさせるのかもしれません。ただこういった懐疑派であれば、よくできたクラウドコンピューティングシステムにおいてはさほど自由度が損なわれないこともあるのだ、ということを理解すれば、逆に一気に肯定派にまわる可能性もあるのではないかと思っています。
懐疑論のなかでもっとも説得力があるのがセキュリティの話です。実際冒頭に述べたNHKの番組でも、最後はその辺りへの疑問を呈する形で終わっていたようです。冷静に考えると、研究開発/製品設計等の機密データや、基幹業務取引データなどがクラウドコンピューティングに移行するのはまだまだ抵抗があってしかたないところです。もちろん、クラウドはむしろローカルでシステムを持つよりもセキュリティがしっかりしているのだ、という立場で話すこともできますが、たとえ心理的な不安のみであってもそれは十分に意を得ています。
最後に、ただただ、現実の話です。要は、クラウドへ移行するにはコストがかかる、ということです。今まで企業であれ個人であれ、ローカルコンピュータ、あるいはイントラネットにインストールして使われていたアプリケーションを、インターネット上のクラウドに移動するにはかなりの労力を有します。ただ単に、アプリケーションがクラウド上にあればいい、というわけではありません。データもそこに置いておかなければなりません。複雑な業務システムであればあるほど難しくなります。
というわけで、肯定派の自分も、やっぱり懐疑論はそれなりに正しいのだと思っています。
しかし、クラウドがまだまだ懐疑的であるというただそれだけをもって、いままでのシステム構築方法やシステム導入方法をそのまま継続することを肯定するのはどうかと思うのです。以下それについて述べます。
イントラネットというラストリゾート(誰にとって?)
クラウドコンピューティングだったりSaaSだったりがなかなか攻めあぐねている場所があります。それはイントラネットです。
特にSaaSは常にイントラネットに導入できるパッケージ製品と比較されます。あるいは自社で構築するシステムと比較されます。先ほどの話のとおり、顧客がイントラネット内で自らの資産でシステムを維持したい、あるいはやむをえずそうせざるを得ない、というケースは十分あります。
SalesforceがSaaSで成功しているのは、売っているものがそれだけで完結しており、既存システムと必ずしも関連する必要がなかったものだったからです。その場合は導入コストを考えればすぐにメリットが出ます。ただ、既存システムからの移行、あるいはインテグレーションを考えなければならなくなったとたん、あっという間にコストが跳ね上がり、あまりパッケージ導入と変わらなくなってしまう可能性があります。
クラウドあるいはSaaSとイントラネットの間のデータインテグレーションについて致命的に拙いところは、ファイアーウォール越えができないことです。ほぼ常にイントラネットからのポーリングになります。これはイントラネットですべてやる場合よりも複雑なシステム構成になりうることを示唆します。
既存のシステムとの連携を重要視する以上、まだまだイントラネットの中にシステムを構築する、あるいはパッケージ導入するということは、主流であります。それゆえ、既存のSIモデルおよびそこにかかる高いコストを正当化できる理由になっています。その当事者に、クラウドだ、SaaSだと声高に言われても、絵に描いた餅のようです。どんなにクラウドやSaaSがブレイクしても、まあそのあたりは安泰だろうという楽観があります。もしかしたらラストリゾートと言っていいのかもしれません。ただしかし、はたしてそのラストリゾートはいつまでたっても楽園なのでしょうか?
イントラネットを浸食するマッシュアップ
マッシュアップテクノロジー、ここではいわゆるクライアントサイドマッシュアップにフォーカスするのですが、実はこの構造を大きく動かす可能性があるものである、と見ています。
マッシュアップといえば、Google Maps API + XXX という組み合わせは、いつの間にかこの世に腐るほど出てきました。あまりに氾濫してしまっているので、この単一のイメージでマッシュアップが語られている気がして少々残念です。ただ、Google Mapsには地図としてのサービス以上に、アプリケーションアーキテクチャとして非常に示唆的な面があると考えます。これは単に地図データの配信、というだけでなく、アプリケーションコンテナの配信である、と見るべきです。
Google Maps API が革新的であったのは、どのWebページにもその地図機能を簡単に貼付けられるということでした。そして、地図上にその読み込んだ先のサイトが持っているデータを重ね合わせてプロット表示できるということでした。もちろん、Google Mapsはイントラネットの中にも配置でき、簡単にイントラネットのデータ(たとえば配送システムにある配送先の住所情報など)をプロットすることができます。(Google Mapsのエンタープライズライセンスの話は別)
Google Maps以前は、地図情報システムはパッケージなり地図データなりを買ってきて、そこにシステムをインストール&構築するものでした。(実際自分が昔所属していた会社でもやってました)。しかし、もはや今はそれはあまりないでしょう。すくなくともそれ単独で馬鹿高いコストをかける理由にはなり得ません。なぜならそこにもう安価かつ簡単にできる方法が見えているのだし、すぐに試すことだってできてしまうのですから。
こういった有用なアプリケーションがインターネットから配信されてくる。しかもそれがまったく導入の手間が要らない。そしてデータは別に既存のシステムのものをそのまま使ってよい。
現在、弊社ではこれをもう少し一般的にして、エンタープライズシステムの世界に起こそうとしています。今までのシステム構築の仕方を大きく変え得ます。そこにはインターネット/イントラネットの垣根は取り下げられ、Webの革新のスピードがそのまま波及していきます。われわれの言うマッシュアップは、ワークフローエンジンやデータ統合ツールをダウンサイズしたものではありません。かといってパブリック・インターネットの広い世界でとどまり続けて、まったく落ちてこないわけでもありません。マッシュアップそのものがクラウドからあなたの環境に降ってくる、のです。
まあ、正直これが書きたかっただけですが。
以上、長文失礼しました。